展覧会情報

第137回後期 「勝見 勝賞」10周年記念展

1997年10月28日(火)~11月01日(土)

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Gallery Talk ギャラリートーク:神田昭夫 「勝見勝賞」10周年記念展とシンポジウム 「勝見勝賞」は、第二次世界大戦後の復興期から高度経済成長期にかけて、評論家として、デザイン啓蒙家として、日本のデザイン界に大きな影響力を持ち、国際的にも高い評価を受けられた勝見勝氏(1909-1983)の業績を記念して制定された。勝見氏の葬儀は、ICOGRADAを含むデザイン13団体による盛大なものであったが、その香典は「勝見勝著作集」の刊行と、「勝見勝賞」の制定にあてられた。「勝見勝賞」は、「勝見勝著作集」(全5巻)の刊行を待った形で、これを副賞として1988年より実施されたが、合同葬儀委員長の亀倉雄策氏(氏も昨年、惜しくも他界された)の呼びかけで、合同葬儀13団体のうちの5団体(東京アートディレクターズクラブ、日本インダストリアルデザイナー協会、日本グラフィックデザイナー協会、日本デザイン学会、日本デザインコミッティー)が持ち回るというユニークなものとなった。第1回の賞状をデザインされた田中一光の発案で、賞状もトップデザイナーがボランティアでリレーするという、デザイン選奨にふさわしいものとなった。幸い、5団体を2巡し、1997年に10周年を迎えたことを記念して、「勝見勝賞」10周年記念展とシンポジウムが開かれた。記念展は、受賞者10人と、賞状デザイン10点を紹介し、合わせて勝見氏がデザイン・コーディネーターとしてかかわったプロジェクトが、ポスターを中心にして展示された。すなわち、世界デザイン会議、東京オリンピック、大阪の日本万国博、札幌冬季オリンピック、沖縄海洋博などの国家的なプロジェクトである。また、日本デザインコミッティーや、海外のイベントのプロジェクトも展示され、それらのポスターは、戦後の日本デザイン史の一断面を示すものとなった。折しも、長野冬季オリンピックの画家による公式ポスターが社会問題化したこともあって、東京オリンピック公式ポスターの4年と続く一貫した力強さや、東京オリンピックのデザイン・ポリシーの評価を国際的に決定づけたピクトグラム・デザインなどのデザイン・コーディネーターとしての勝見氏の業績が偲ばれ、来場者に深い感銘を与えた。シンポジウムは、5団体が分担する形で3夜にわたって開催された。初日は、柏木博、田中一光、福田繁雄、3氏による「情報化時代のグラフィック」、2日目は、木村一男、豊口協、森山明子、3氏による「転換期の工業デザイン」、最終日も、出原栄一、太田幸夫、郡山正、3氏による「教育ブームとデザイン」である。デザイン分野を横断する形となったが、3日とも限られた時間ながら、活字化されることのなかった勝見像も浮き彫りにしながら業績を検証し、またその地平に展開した現代デザインを基盤にして、21世紀のデザインも視座におくという、記念シンポジウムにふさわしい高揚したものとなった。 (長岡造形大学教授)