展覧会情報
第81回 共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地
2020年07月04日(土)~09月06日(日)
・開館のお知らせ
・新型コロナウィルス感染症予防・感染拡大防止の対策とお願い
CCGA現代グラフィックアートセンターは1995年に開館して以来、今日の国内外のグラフィックアートを紹介してきました。2020年に開館25周年を迎えるにあたり、記念展として「共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地」を開催いたします。
浮世絵に代表される板目木版画が木の幹を縦に割った板材を版木として用いるのに対して、木口木版画は、黄楊(つげ)や椿などの堅い木を輪切りにした面(木口)を版面とし、銅版画用のビュランという鋭利な彫刻刀で彫ることで細密な表現ができる木版画です。
木口木版画は18世紀末にイギリスのトマス・ビュイックにより広められ、活字と組み合わせて書籍や新聞の挿絵図版に用いられることにより欧米で発展しました。木口木版の技法は日本にも明治時代に伝わり、やはり挿絵図版用の印刷技術として活用されましたが、オフセット印刷のような写真製版を利用した技術の台頭により、印刷技術としての木口木版はやがて衰退していきました。
いわば「忘れられたメディア」となっていた木口木版画を日本において美術表現として甦らせたのは、1960年代から独学でこの技法を身につけ作品を制作した日和崎尊夫(1941-1992)でした。とくに、日和崎と彼から学んだ柄澤齊(1950-)を中心に70年代に結成されたグループ「鑿(のみ)の会」の作家たちによる活躍は、わが国での木口木版画の浸透と広がりに大きな影響を与えました。その後も現在にいたるまでこの技法に取り組む新しい世代の作家たちがあらわれ、それぞれ独自の方法論によって木口木版画を制作しています。
精緻でありつつ生命力を感じさせる描線の力、独特の奥深さをもったモノクロームの作品世界、あるいは板目木版とも銅版とも異なる素材を彫る手の感触など、作家たちが木口木版に惹かれる理由はさまざまですが、彼らの作品に共通しているのは、決して大きいとはいえない画面の中に、ときに高度な象徴性や文学性をまとった濃密なイメージが展開されている点だといえます。こうして木口木版画は、わが国で独自の発展を見せてきました。
本展は13人の現代作家が手がけた作品により、木口木版のいまを展覧します。繊細で詩的な画面を描き出す彼らの刻線は、作家の精神と物質としての版木が出会い、共鳴することで生まれる世界の痕跡ともいえるでしょう。また展覧会には、日本の現代木口木版画の先駆である日和崎尊夫の作品や、明治時代に日本で造られ、活字や木口木版画の印刷に使われたアルビオン・プレス型平圧印刷機なども出品されます。本展が多くのかたにとって、木口木版の魅力に触れる機会となれば幸いです。
お知らせ
- 2020年07月21日
- 「共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地」展 柄澤齊氏によるアルビオン・プレス型平圧印刷機を使った刷りの解説動画
- 2020年07月05日
- 「共鳴する刻[しるし]―木口木版画の現在地」展会場写真アップしました。
会場
CCGA現代グラフィックアートセンター
〒962-0711 福島県須賀川市塩田宮田1
Tel: 0248-79-4811 Fax: 0248-79-4816
開館時間
午前10時―午後5時(入館は午後4時45分まで)
休館日
月曜日(8月10日を除く)、8月11日(火)
*会期前6月8日(月)―12日(金)および会期後9月7日(月)―11日(金)は展示替えのため休館となります。
入館料
一般=300円/学生=200円
小学生以下と65才以上、および障害者手帳をお持ちの方は無料
主催
公益財団法人DNP文化振興財団/CCGA現代グラフィックアートセンター
交通
JR水郡線小塩江駅から送迎車あり(要電話申込)/JR東北本線須賀川駅からタクシー20分/東北新幹線郡山駅からタクシー30分/東北自動車道須賀川ICから自動車20分
※JR水郡線ご利用の場合、郡山―小塩江間の所要時間は、約20分です。
※JR水郡線は列車の運行本数が非常に少ないため、利用の際はお時間にご注意ください。
時刻表(休日ダイヤ)は、下記JR東日本のサイトからご確認いただけます。
郡山駅 → 小塩江駅(休日)
小塩江駅 → 郡山駅(休日)
出品作家
小川 淳子/柄澤 齊/栗田 政裕/齋藤 僚太/田中 彰/二階 武宏/野口 和洋/林 千絵/戸次 祥子/松岡 淳/三井田 盛一郎/三塩 佳晴/若月 陽子