2016年度DNP文化振興財団 グラフィック文化に関する学術研究助成 採択研究
審査の経過と講評
2014年からスタートしたDNP文化振興財団のグラフィック文化に関する学術研究助成は、今年も46件の応募がありました。研究者の間でこのプログラムが着実に浸透してきたことを喜ばしく思います。
審査は昨年同様、書類審査である第一次審査の後、審査委員が一堂に会する第二次審査委員会を開催しました。そして討議の結果、グラフィックに関わる幅広いテーマを対象とするA部門に11件、グラフィックデザイナー田中一光に関する研究が対象のB部門に1件の、合計12件の研究テーマを本年度の採択研究に選出しました。あわせて、昨年採択された研究のうち助成継続希望のあった7件についても、中間報告書にもとづく審査の結果、すべての申請で継続助成が承認されました。
応募された申請にはこれまでにも増して質の高い研究が多く、本プログラムの意義と可能性をあらためて確認できました。審査に際しては、新規性・独創性、社会や学問分野における意義・重要性、そして研究計画の妥当性の観点から個々の申請を慎重に評価し、結果的にユニークでかつ実現可能性の高い研究が選出できたと思います。一方で、ある委員から、恵まれない研究環境にいながら頑張っている研究者にチャンスを与えるべきであるという意見も出されました。これは今後の課題として検討したいと考えています。
採択された研究者の皆さまには、研究が充実したものとなり、有意義な成果の発表を聞けることを期待しております。
公益財団法人DNP文化振興財団
審査委員長 柏木 博
応募状況
募集期間:2016年5月1日~7月10日
応募件数
小計 | 内訳 | ||
---|---|---|---|
国内 | 海外 | ||
A部門 | 42件 | 40件 | 2件 |
B部門 | 4件 | 3件 | 1件 |
合計 | 46件 | 43件 | 3件 |
2016年度採択研究
部門 | 研究テーマ | 代表研究者 所属・職名 |
助成額 |
---|---|---|---|
A |
ディスレクシアに特化した和文書体と書体カスタマイズシステムの研究 |
朱 心茹 東京大学大学院 教育学研究科 大学院生 |
500,000円 |
A |
建築の表象とグラフィックデザイン 建築展の分析を中心に |
保坂 健二朗 東京国立近代美術館 主任研究員 |
500,000円 |
A |
「ウィーン・キネティシズム」派のテキスト絵画:先進的デザイン教育と国際的アヴァンギャルドの交錯 |
角山 朋子 獨協大学 非常勤講師 |
500,000円 |
A |
視覚文化の日韓比較研究 —女性妖怪の視覚イメージを素材として— |
朴 美暻 京都大学 文学部 非常勤講師 |
400,000円 |
A |
「趣味と平凡」(1920-1926)という雑誌・そのデザインと国際化 |
チャプコヴァー・ヘレナ 早稲田大学 国際教養学部 助教 |
500,000円 |
A |
グラフィックデザイン史における粟津潔の役割:金沢21世紀美術館所蔵作品・資料をもとに建築、映像・写真との関わりから再考する |
高橋 律子 金沢21世紀美術館 学芸員 |
300,000円 |
A |
絵とともに語ることばの未来 多言語表記民話絵本のブックデザイン |
山本 史 京都市立芸術大学 美術学部デザイン科ビジュアルデザイン専攻 非常勤講師 |
500,000円 |
A |
板木から見た職人技の解明 |
安藤 真理子 同志社大学 文化遺産情報学研究センター 嘱託研究員 |
500,000円 |
A |
レジリエンスデザインとしての避難所における情報伝達とコミュニケーション —人々の問題や解決方法を「張り紙」からよみとく— |
尾方 義人 九州大学 准教授 |
300,000円 |
A |
クーパー・ヒューイット国立デザイン美術館およびクーパー・ユニオン・ハーブ・ルバリン研究センターの日本のグラフィックデザイン・コレクション |
野見山 桜 クーパー・ヒューイット スミソニアンデザインミュージアム リサーチフェロー |
300,000円 |
A |
パブリックイメージ形成の場としての古代ギリシャ陶器 |
田中 咲子 新潟大学 教育学部 准教授 |
250,000円 |
B |
カバリエ投影法と多焦点の適用 —田中一光のデザイン言語 |
肖 浪 香港中文大学 芸術学部 大学院生 |
450,000円 |
2016年度継続助成 (2015年度採択研究)
部門 | 研究テーマ | 代表研究者 所属・職名 |
助成額 下段は昨年度助成額 |
---|---|---|---|
A |
グラフィックデザイナーの著作権と生計に関する日仏比較研究 |
長塚 真琴 一橋大学 大学院法学研究科 教授 |
500,000円 500,000円 |
A |
災害におけるカラーバリアフリーの表示 |
土田 賢省 東洋大学総合情報学部 教授 |
500,000円 500,000円 |
A |
イギリスの大衆紙『ザ・グラフィック』とファンシー・ピクチャーの復権に関する研究 |
佐藤 直樹 東京芸術大学 美術学部 芸術学科 准教授 |
500,000円 500,000円 |
A |
近代日本の広告図像における少女の表象とその受容 |
前川 志織 京都工芸繊維大学 美術工芸資料館 技術補佐員 |
500,000円 500,000円 |
A |
戦後首都理想図 —ヴィジュアル・コミュニケーションにおける「東京」のグラフィック・デザイン |
OSAWA Kei 東京大学 総合研究博物館 特任研究員 |
500,000円 500,000円 |
A |
死者イメージの視覚化に関わるヴァナキュラーな信仰実践の研究 |
小田島 建己 東北大学 大学院 文学研究科 専門研究員 |
500,000円 500,000円 |
B |
蘭字~日本近代グラフィックデザインの「始まり」の根とその発展 |
吉野 亜湖 静岡産業大学 情報学部 非常勤講師 |
500,000円 500,000円 |