2019年度DNP文化振興財団 グラフィック文化に関する学術研究助成 採択研究
審査の経過と講評
2019年度、DNP文化振興財団グラフィック文化に関する学術研究助成は、国内79件、海外16件、計95件という過去最多の応募がありました。本助成プログラムが研究者コミュニティに広く知られるようになったことの証左だと思います。
また、昨年まで「グラフィック・デザイナー、田中一光に関する研究」を募集していたB部門を、今年度から「グラフィック文化に関するアーカイブをテーマとする研究」へと変更し、この新たなB部門に、国内外から計24件の応募を受けつけました。研究基盤としてのアーカイブの重要性が世界中で再認識されていることを示すものと思います。
審査は例年どおり、書類審査で行う一次審査と審査委員が一堂に会する二次審査の二段階で行いました。そして討議の結果、グラフィックに関わる幅広いテーマを対象とするA部門で9件、アーカイブをテーマとするB部門で2件、計11件を本年度の新規採択研究に選出しました。また、2018年度採択研究のうち継続助成希望のあった10件については、中間報告書にもとづく審査の結果、すべての継続助成が承認されました。
審査は、研究テーマの新規性・独創性、社会や学問分野における意義・重要性、そして研究計画の妥当性の三つの観点で、個々の申請を評価しました。選考に際しては、スケジュールや助成金の使途といった研究計画の妥当性が、例年以上に慎重に考慮されました。その結果、研究手法や計画がよく練られた堅実な研究が選出されたと思います。
採択された研究者の皆さまには、研究が充実したものとなり、有意義な成果の発表を聞けることを期待しております。
公益財団法人DNP文化振興財団
審査委員長 柏木 博
応募状況
募集期間:2019年5月1日~7月17日
応募件数
小計 | 内訳 | ||
---|---|---|---|
国内 | 海外 | ||
A部門 | 71件 | 62件 | 9件 |
B部門 | 24件 | 17件 | 7件 |
合計 | 95件 | 79件 | 16件 |
2019年度採択研究
部門 | 研究テーマ | 代表研究者 所属・職名 |
助成額 |
---|---|---|---|
A |
患者・市民向けがん情報提供における効果的なメディカルイラストレーションの作成・活用に向けた大規模アンケート調査 |
原木 万紀子 埼玉県立大学 保健医療福祉学部 健康開発学科 健康行動科学専攻 准教授 |
500,000円 |
A |
1980年代におけるイラストレーターの社会的立ち位置とイラストレーション言説の恣意性をめぐる研究 |
塚田 優 多摩美術大学油画研究室 助手 |
350,000円 |
A |
都市空間に刻まれるグラフィックス文化:シーン街区の言語景観に関する研究 |
池田 真利子 筑波大学 助教 |
500,000円 |
A |
日本近代石版画研究発展のための亀井至一・竹二郎研究 |
中山 恵理 郡山市立美術館 学芸員 |
500,000円 |
A |
ペーパー・ギャラリー:出版アートを通した日米交流 |
廣 李果 南カリフォルニア大学 美術史学部 ドーンサイフ博士教職フェロー |
500,000円 |
A |
杉浦非水の戦争疎開資料に関する調査研究 |
折井 貴恵 川越市立美術館 学芸員 |
500,000円 |
A |
日本の写真黎明期におけるカロタイプとアンブロタイプの実践にみる写真の複製性にたいする認識 |
安藤 千穂子 京都工芸繊維大学 博士後期課程 |
500,000円 |
A |
20世紀前半の日本・ドイツにおける文字改革運動の経済史的研究―カナモジカイとバウハウスを手がかりに― |
川嶋 稔哉 ペンシルヴェニア大学 博士課程大学院生 |
500,000円 |
A |
第二次世界大戦後のイタリアのグラフィック・デザイナーと社会:アルベ・スタイネルに関する基礎的研究 |
太田 岳人 千葉大学 文学部 非常勤講師 |
500,000円 |
B |
民間所在アーカイブズにおける写真の公開・活用体制の構築―女性・子どもを記録した写真家を対象に― |
阿久津 美紀 目白大学 人間学部 児童教育学科 助教 |
500,000円 |
B |
粟津潔アーカイブにおけるポスター類画像データ公開と著作権対応について |
石黒 礼子 金沢21世紀美術館 アーキビスト |
500,000円 |
2019年度継続研究(2018年度採択研究)
部門 | 研究テーマ | 代表研究者 所属・職名 |
助成額 下段は昨年度助成額 |
---|---|---|---|
A |
イメージ、タイポグラフィー、イデオロギー:植民地時代(1920-30年代)における韓国の構成主義 |
鄭善娥(チョン,ソナ) ソウル大学 博士課程 |
250,000円 400,000円 |
A |
視覚文化研究における生物学とバイオメディアの考察:微生物によるグラフィックスを事例に |
長谷川 紫穂 埼玉大学大学院人文社会科学研究科 産学官連携研究員 |
500,000円 500,000円 |
A |
古代地中海文明における空間と平面を繋ぐ媒体としてのグラフィックアートに関する研究:古代エジプトのデザイン技法の分析を中心に |
安岡 義文 東京大学大学院工学系研究科建築学専攻 日本学術振興会特別研究員SPD |
500,000円 500,000円 |
A |
画面デザインの保護のあり方・意匠法による保護拡張は必要か |
麻生 典 九州大学芸術工学研究院 助教 |
500,000円 500,000円 |
A |
実験心理学手法による慣用色名認識の現状把握とカラーシステムへの対応性評価 |
吉澤 陽介 木更津工業高等専門学校情報工学科 准教授 |
350,000円 500,000円 |
A |
写真植字と光学的デザイン:1950年代末~90年代前半の日本における組版とブック・デザインの展開 |
阿部 卓也 愛知淑徳大学創造表現学部 准教授 |
300,000円 500,000円 |
A |
書物の機能と装飾:西欧初期中世法典写本の研究 |
安藤 さやか 東京藝術大学美術学部芸術学科西洋美術史研究室 教育研究助手 |
500,000円 250,000円 |
A |
近代日本写真における雑誌からオリジナル・プリントへのメディア変遷―ギャラリスト・石原悦郎の書簡アーカイビングを通じて |
粟生田 弓 石原悦郎とツァイト・フォト・サロン アーカイブズ |
500,000円 500,000円 |
A |
ドイツ語圏のジャポニスム:ヴァルター・クレムとカール・ティーマンの多色木版画を中心に |
青木 加苗 和歌山県立近代美術館 学芸員 |
500,000円 500,000円 |
A |
井上隆雄写真資料のアーカイブ構築に基づいたラダック仏教壁画のグラフィック的観点からの表現技法研究 |
山下 晃平 京都市立芸術大学美術学部 非常勤講師 |
500,000円 500,000円 |