展覧会情報
京都dddギャラリー第230回企画展 SURVIVE - EIKO ISHIOKA /石岡瑛子 デザインはサバイブできるか ※gggより巡回
2021年10月16日(土)~12月18日(土)
生前、石岡がマントラのように唱えていたことば、「ORIGINARITY」、「REVOLUTIONARY」、「TIMELESS」。半世紀近い時を超えてなお、これら石岡瑛子の革命的な創造精神の破片は、私たちの心を激しく揺さぶりながら、確信を持って「目覚めなさい」とささやいています。
お知らせ
会場・会期
京都dddギャラリー
2021年10月16日(土)-12月18日(土)
開館時間11:00-19:00 ※土曜日は18:00まで
日曜・月曜・祝日休館 入場無料
〒616‒8533 京都市右京区太秦上刑部町10
TEL:075-871-1480 FAX:075-871-1267
地下鉄東西線 太秦天神川駅1番出口 徒歩3分、嵐電嵐山本線 嵐電天神川駅
徒歩5分、市バス・京都バス 太秦天神川駅前下車、駐車場無
監修
石岡怜子 河尻亨一
デザイン
永井裕明(N.G.inc.)
展示構成
中沢仁美(シービーケー)
展示映像
加藤貴大(motion graphic director)
熊本直樹(design director)
EDP graphic works(motion graphic design)
石岡瑛子(いしおかえいこ)
デザイナー/アートディレクター。東京藝術大学卒。1961年、資生堂宣伝部入社。前田美波里を起用したポスターなどで頭角を現し独立。70年代にはパルコ、角川文庫など時代を揺るがす数々のキャンペーン、ファッションショーの演出、書籍デザイン他を手がける。80年代初頭に活動の拠点をニューヨークに移して以降は、美術及び衣装デザインなど、さらにボーダーレスに仕事の領域を広げ、舞台「M.バタフライ」でニューヨーク批評家協会賞、アルバム「TUTU」でグラミー賞、映画「ドラキュラ」でアカデミー賞を受賞するなど世界的評価を得る。作品集に『EIKO BY EIKO』『EIKO ON STAGE』、著作に『私デザイン』他がある。
「頭で見るな、カラダで知れ、その声を聴け」ー本展開催に寄せてー
「こんな世界でよくサバイブできているわよね、私」
瑛子さんはそう言った。独特にハスキーなあの声で。
2011年6月。私が取材でニューヨークのオフィスにおもむいたときのことだ。4時間におよぶ長いインタビューの中で、ふと漏らしたひと言。6年がかりの長い製作期間をへて、ブロードウェイミュージカル「スパイダーマン」が、ようやく本公演にこぎつけたタイミングでのコメントだった。
そこは白一色の空間。このアトリエで彼女は、ひとつのプロジェクトが終わるたびに「私」をリセットし、まっさらな”キャンバス”に向き合いながら、だれも見たことのないビジョンをつくり続けてきたのだろう。
あれから9年たった。
瑛子さんは旅立ってしまったが、生み出された仕事たちは、宝石のような輝きを放っている。移り変わりの激しい時代の中で、力強くサバイブしている。
「タイムレス(時代をこえて)」
「レボリューショナリー(革新的なマインドで)」
「オリジナリティ(私の底から湧き上がる何かを)」
―彼女がマントラのように唱えた3つの言葉に嘘はない。
映画監督フランシス・コッポラは、かつて瑛子さんを「境界のないアーティスト」と評した。
広告に映画、演劇といった業界の垣根だけでなく、ポスターやセット、衣装など彼女の”キャンバス”はジャンルをも超越している。「表現はかくあらねば」といった既成概念から、1万パーセント解き放たれた人だった。
映画監督ターセム・シンはこう言った。「エイコはディテールに悪魔を宿らせる」
そうだ、瑛子さんは"ディテール命"のデザイナーでもあった。彼女の表現には、感動を生きたままピンで留めるかのようなところがある。細部に生命力がみなぎっている。瑛子さんのオーダーに応えるため、写真家やイラストレーター、演出家だけでなく、製版・印刷その他の技術者たちも命がけでコラボレーションした。まさに命のデザイナーだと思う。
そういった瑛子さんの創造スタイルは、デビューの仕事である「ホネケーキ石鹸」(資生堂/1964年)や「シンポジウム:現代の発見」(日宣美グランプリ/1965年)を手がけた頃には、すでにベースが確立されている。
そして彼女は生涯その姿勢を貫いた。海外のクリエイティブ巨人たちと、どんな"お手合わせ"をしているときも。評伝『TIMELESS 石岡瑛子とその時代』を執筆する過程で、私はそのことに気づいた。
広告やグラフィックアート、エディトリアルからレコードなど、主に1960~70年代のグラフィックデザインの仕事にフォーカスした本展では、そんな瑛子さんの"原点"に出会うことができるだろう。
パルコや角川文庫など、時代にセンセーションを巻き起こしたメジャーな広告キャンペーンの名作も見応えがあるが、これまであまり見る機会がなかったプライベートワークや書籍デザインも魅力的だ。瑛子さんの声と言葉も"展示"される。
それらからは彼女の強さと柔らかさ、情熱と知性の両サイドが、まるで3Dホログラムのように浮かび上がる。
昨年冬から今年春。ギンザ・グラフィック・ギャラリーで開催され、センセーショナルな話題を巻き起こした「石岡瑛子・サバイブ」展が、この秋、京都dddギャラリーにやって来る。あの"熱量"はそのままに。
瑛子さんのパワーを全身に浴びていただきたい。鑑賞するのではなく、裸のココロで対峙してほしい。頭で見るな、カラダで知れ、その声を聴け。混沌とした時代に、立ち向かう勇気とエナジーもらえるから。
最後にもうひとつ彼女の言葉を紹介しておきたい。2008年5月。北京で応じてくれた5時間のインタビューから。
「いつも崖っぷちにつま先で立ってる。そんな実感があるわね。ヘタをすると落っこって命を落とすわけだけど、そこに踏ん張って生き残るみたいな―そんな瞬間が何度もある。クリエイティビティの本質はそういうことの中にありますから」
合言葉はサバイブ。石岡瑛子は生きている。
河尻亨一